ヒトデは、棘皮動物門Echinodermata ヒトデ綱Asteroidea に属する海産無脊椎動物である。この棘皮動物門には他に、ウミユリ綱、クモヒトデ綱、ウニ綱、ナマコ綱、ウミリンゴ綱、座ヒトデ綱、螺板綱、ウミツボミ綱などが含まれ、現生のものは最初の4綱にヒトデ綱を加えた計5綱のみであって、ヒトデ綱は現生棘皮動物の中では比較的原始的なグループである。全て海産で、今のところ淡水及び陸上からは確認されないが、水深の殆どないような磯から深海に至るまで海中においては非常に広い分布を持つ。
ヒトデは全てが5本の腕(ray or arm)を有する所謂「星型」であるとは限らずその形態は案外多様。体表面にマクを持っているものや、腕がまるでウミシダのように羽根状の形態をしているもの、腕の本数が20本を越えるもの、他のヒトデのように長い腕を持たず、ほぼ円形を棘で縁取っただけのようなものなどがある。
腕に対し各々の腕が接続する中央の部位は盤(disc)と呼ばれる。ヒトデの背側(通常海水中に向けられている)は反口側(aboral side)、腹側(通常海底面に向けられて接地している)は口側(oral side)という。盤の反口側面にはその中央に肛門が存在しており、中央から少しそれた位置に多孔板(madreporite)という海水の取入れ口が存在する。多孔板の数は種によって異なり、多くのものでは一つしかないが一部の種では多孔板の数が著しく多い。ヒトデを形態学的に分類する際、重要となるもののうち幾つかを挙げる。縁板(marginal plate)、これはヒトデの体の側面に列生する骨板である。より反口側に存在するものは上縁板(superomarginal plate)と呼ばれ、口側に近いものを下縁板(inferomarginal plate)という。また、Henricia属などの一部のヒトデ類には上縁板と下縁板の間に間縁板(intermarginal plate)という骨板が挿入されることもある。また、縁板上には棘(spine)が立つこともあり、ものによっては背棘(aboral spine)と形状が類似するが、そうでないものもある。この棘は縁板棘(marginal spine)と呼ぶ。
食生は様々。腐肉食生のものや懸濁物食生のもの、堆積物食生のものなどがある。しかし基本的には獰猛な捕食者であり、貝などのベントス殆どがその捕食対象となる。その獰猛さは生態系を語る上で、しばしば彼らに重要な地位を与え得る。例えば、潮間帯における二枚貝類の優先を抑制する役割などが挙げられ、この場合ヒトデをキーストーン種(keystone species)であると判断する。しかしながら、ヒトデのこの様な肉食性はしばしば人間から嫌われる。大量発生などを引き起こした際には特に、漁業上重要な海産物を捕食し経済的な損失を招くからである。
ヒトデにまつわる何か問題を挙げようと思うのだが、人間が経済的被害を被ることなどは私に言わせればさして重要なことではなく興味もわかないのであって、オニヒトデについても今更周知のことであると思われるから、ヒトデのwasting diseaseについて少し触れたい。この病はヒトデの組織を溶かし死に至らしめる。原因は未だ以て不明であるが、微小病原体のせいであるとか気温上昇のせいであるとか憶測が飛び交う。この病が蔓延してしまい、ヒトデの生態学的なニッチが脆弱になってしまうことは即ちそれよりも食物連鎖の下流に存在する生物の生存率を高めてしまうわけであり、生物の生育環境に何らかの悪影響が生じる恐れは否めない。
*下に行けば行くほど 新しい記事になります。
ヒトデ
Macroptychaster accrescens:中央から腕の先まで26㎝
Odontaster validus:中央から腕の先まで7㎝
Acodontaster hodgsoni:中央から腕の先まで20㎝
食物連鎖
勿論、食物連鎖と言えば様々な生物が複雑に関わり合った上で成り立つものであるが、時にはヒトデだけに注目してみても面白い。
Acodontaster hodgsoniは薄橙色をしていて腕は長い。このヒトデは海綿の捕食者として知られる。中々大きいヒトデなのだが、ある捕食者がいる。それがOdontaster validusだ。彼らは腕と腕の間の切れ込みが浅く、赤紫やオレンジ色をしている小型のヒトデでこの三種の中では最も一般的な種だ。O. validusは他にも様々な生物を襲うが、時としてA. hodgsoniにその魔の手を伸ばす。まず、一匹のO. validusがA. hodgsoniに乗り、消化を始める。その時点でA. hodgsoniにとってはさほど被害もなく命取りにはならない。しかし、そこで体液等が海水中に溶け出してしまうと大変なことになる。どこからともなくにおいを嗅ぎつけたO. validus達が次々と集まってくるのである。こうなってしまってはA. hodgsoniにもう打つ手は無い。動きも段々遅くなってきて、最後にはO. validusの胃の中である。
以上を読むと、O. validusが増え続けてしまうかに思われる。しかし彼らもまた、ヒトデに食べられる。ここでやっと登場するのがMacroptychaster accrescens。
このヒトデに言えるのはとにかく大きいということで、全体的なサイズは、時に60㎝にも及ぶらしい。色は薄いオレンジ色で、腕は長く太い。彼らの食性はウニ、貝、クモヒトデ、O. validusなどである。
ヒトデを食うヒトデというのはヒトデの世界では結構普通のことなのだろう。
モミジガイAstropecten scoparius
・彼(彼女?)は石川県出身です。
食欲旺盛で、まさに育ち盛りといった具合でしょうか?
同居人のヒラモミジとは毎回熾烈な餌争奪戦を繰り広げます。写真の子は腕の内の一つに何か不穏な動きが見られます(見えないカモ)。「これは一体...」なんて考え続けて一年は経ったでしょうか。もしかすればもしかすると、腕の途中から腕が新たに生えてきているのではないかと期待に胸ふくらませる毎日であります。夏の暑さにも負けず上手く育ってくれることを期待します。
上記とは違う個体で、キス釣りの仕掛けにかかったものです(もとよりヒトデ狙いだったんですけど)。画面下向きに伸びている腕の歩帯溝(中央の溝)の左の部分を注意して見てみると、ウロコムシかと思われる寄生虫(共生なのかわかりませんが、とりあえず寄生虫としておきます)がついています。この後更に詳しく調べてみると、歩帯溝の中にもう一匹大きめのやつが入っていました。もしや、寄生虫の夫婦だったのでしょうか?
もしそうなら、おしどり夫婦ならぬウロコムシ夫婦ですね。
ヒメヒトデとはSpinulosida目-Echinasteridae科-Henricia属に分類され、また、R(中心から腕の先端までの長さ)=1~2cm程度の小型のヒトデである。その性質は温和で、飼育下において、イトマキヒトデのように何から何まで襲ってしまうようなことはない。その小ささもあって、他のヒトデと同居させると直ぐに食べられてしまうくらいである。ある日、そんなヒメヒトデに何かが起きた...。
ヒトデには口側と反口側とがあり、普段基質に向かっていない側が反口側である。反口側には肛門があり(但し一部例外有り)、口側には口がある。ヒメヒトデもまた先述の通りに口と肛門を持っている。
ある日私はふと水槽を覗いてみた。一目見て、「ヒメの上に何か乗ってるな...。」と思った。はじめのうちは砂が引っかかったのだろうと考えたが、その水流を考慮に入れると無理がある。気になったので水槽から取り出し容器に入れて観察すると、丁度肛門があると思われる場所からなにやら黄色の物体が飛び出しているようだった。触ってみるとほんの少し引っ込んだため、排泄物やただのゴミとは考えられない。外見としては生殖巣に似ているが場所がおかしい。・・・腸? そう、これは直腸嚢(rectal sac)と呼ばれるヒトデの器官である。どういう訳か、ヒトデの体外に腸の一部が飛び出していたのである。直腸嚢は2日程あり続けたが、暫くして見えなくなった。ヒトデはその後、何事もなかったかのような様子である。
あれは一体何事だったのだろうか?
*このような現象が一体何なのかはわからないが、同じようなことがチビイトマキヒトデでも見られたことがある。全く、不思議だ…。
テスト勉強に飽きた著者が暇つぶしに久々の更新です。
前回に引き続き、最近私が傾倒しているヒトデ、即ち、我が家のヒメヒトデHenriciaについての話題を紹介します。
前回自分は「ヒメヒトデは温和である」的な発言をしたと思います。その後も観察を続けていると...やっぱり温和です。しかし、最近(?)初めて家の水槽で餌を食べている様子を見せてくれました!この写真がその証拠です。シジミを襲っているのがお分かり頂けるでしょう。シジミの口が開いて、開いたその隙間に向けて押し付けられている半透明の噴門胃が見て取れます。
大事そうにシジミの殻を抱きかかえて...健気だと思いませんか?
何かと縁があり、南国性の小型イトマキヒトデ(Aquilonastra属)を7匹我が家に招きました。しかしながら、自分は今このヒトデについて困っていることがあります。一体何故?
実は本種、自分には未だ同定できていないのです。つまり、何という名前かわからないということです。ヒントとなるのは今のところ、多腕性の種でかつfissiparousな種であるという事。その概形からしてイトマキヒトデ科であろうという事。産地が不明であるため、外国の種の可能性があるという事(ヒントとは言いつつこれが結構手厳しい)ぐらい...。思考とセンスがちょっと変であるという点を除けば普通の学生が出来ることにも限界があるというものですが、いつかはよく骨格の形や配列などを調べようとおもいます。そうすればその内種名が判明するかもしれません。
ヒトデさんのツイート
「あ~あ、新種だったらいいのになぁ(´∇`)」
※著者は実際のところ、某つぶやきシステムを利用していません。
ヒトデの幼生は浮遊性のビピンナリア幼生期とブラキオラリア幼生期を経る間接型の発生を行う。しかしこれは全ての種において言えることではなく、例えばチビイトマキヒトデはビピンナリアを経ない直接発生型であり、匍匐性である。他にも、Luidia sarsii などスナヒトデの仲間ではブラキオラリア幼生期を欠くことが知られる。この様に、ヒトデの発生様式は実のところ多様である。
ところで、今回紹介するのは又もやヒメヒトデHenricia nipponicaについてである。冒頭のテーマと写真からもう既に伺えることではあるかもしれないが、ヒメヒトデには幼生の保育を行う習性がある。雌が左上の写真のような姿勢をとって保育室を形成し、その中に受精卵及び幼生を抱きかかえるのである。よって、この幼生が浮遊性のビピンナリア幼生期を経ることは無い。このような保育習性を有するヒトデは他にも報告されており、同属のH.sanguinolenta H.tumida H.pumila などをはじめ、ニチリンヒトデの仲間 Solaster hexactis, マクヒトデの仲間 Pteraster willsi, ウデボソヒトデの仲間 Odinella nutrix, コヒトデの仲間 Leptasterias ochotensis similispinis, などがその例である。また、幼生を自らの胃の中で保育する例も存在しており、Smilasterias multipara, Leptasterias groenlandica, Ctenodiscus australis, などが挙げられる。
写真左上;幼生を保育室に抱えているH.nipponica の雌。
写真右上;変態を完了し、親の保育室から出て来る稚ヒトデ。
(以下 略 可)
思えば長かった...。2013年8月の … (何時だかは忘れましたが)… に採集、10月頃にモミジガイの襲撃により2個体が消息を絶ち、残った4個体の内1個体が翌年2月半ばに出産(産卵)、2014年3月24日に巣立ちというわけです。このオレンジのツブツブ達はこの約一か月間 母親に守られて育ってきました。しかしそれもここまで、これから先はオレンジ一人ずつ自らの力で生きていかねばならないのです。私にできることは、手助けとお祈りだけ。みんながみんな、上手く育ってくれるはず!
まあ、難しいでしょうけどね...。
ヒトデとクモヒトデが互いに棘皮動物門に含まれるということは前述のとおりであるし、互いが近縁な生物であるということはなんとなくその全体の姿から想像がつく。しかし、逆にクモヒトデとヒトデの違いとなると、正直興味のない人には理解が難しいだろう。事実、テレビ番組などでクモヒトデが映像に収められると、タレントなどは「あっ、ヒトデだ!」と言葉を発する。しかしながら、実際はクモヒトデとヒトデは綱のレベルで別のグループに分けられる。では、クモヒトデとヒトデを形態学的に見た目から判別するにはどうしたらいいのだろうか、その例を以下に示す。
まず石を裏返して、そこに多数のクモヒトデが慌てふためいている様子を見ながら、それがクモヒトデかヒトデかを知る簡単な方法は、腕が極端に細長いかどうかである。クモヒトデ類はその腕の容姿から蛇尾類とも呼ばれるし、英名ではbrittle star(脆い・壊れ易い + 星)などと命名されるほどである。しかしこの情報だけでは実は不十分で、事実ヒトデ綱に属するBrisingidaなど一部のヒトデは細長くて脆い腕を有するなどのこともあり、腕と盤の関係という点で両者を区別するのに本当に重要なのは、クモヒトデでははっきりと腕と盤が区画されているのに対し、ヒトデではその境界を示せと言われれば返事に窮する点である。また、歩帯溝を見てみることでも両者の区別はつく。両者とも歩帯溝から管足が突き出すという点では同じであるが、クモヒトデでは歩帯溝が腕骨によってウニのように閉ざされており、その骨格を貫くような形で管足が突き出している。一方でヒトデでは、歩帯溝はウミユリのように開いており、歩帯板という骨格の間から管足が頭を覗かせるといった形である。
この先、是非ともクモヒトデとヒトデを、例えば、クモヒトデはヒトデの一種である というような理解の元に混同して捉えないようにしてもらいたいものである。
・左の写真はニホンクモヒトデの口側である。腕と盤の区別は容易で、歩帯溝の存在すべき場所には骨格が存在している。
・右の写真はキヒトデの反口側・縁板を取り除いたものを口側から見たもの。中央が窪んでおり、歩帯溝が開いている様子がわかる。
日本近海に生息するイトマキヒトデ科(Asterinidae)の仲間のうち代表的なものを挙げると、比較的大きく色も鮮やかなものが多いイトマキヒトデ(Patiria pectinifera)の他、あまり目立たない小型の種が幾らか報告されており、例えば、ヌノメイトマキヒトデやコイトマキヒトデ、カワリイトマキヒトデ、トゲイトマキヒトデなどがある。そして今回の主役となるのが、雌雄同体かつ自家受精能をもつチビイトマキヒトデ(Aquilonastra minor)である。
現在(2014年5月)飼養されているチビイトマキヒトデは、2013年夏に能登で採集された一個体のみである。当初、その一個体が本当にチビイトマキヒトデかどうかは疑わしく、イトマキヒトデの幼若個体かとも考えた。しかし、どうもイトマキヒトデとは雰囲気が違う気がしたため隔離して(イトマキヒトデに食べられないようにするため)育てていたところ、2014年5月11日、その個体が水槽の壁の一角に卵を産み付けている様子を確認することが出来た。卵の数は1007個、全て壁に強く固着していた。5月15日には明瞭なブラキオラリア腕が確認され、翌日5月16日には匍匐するブラキオラリア幼生を観察することが出来た。その後、5月22日には完全に変態を終えた稚ヒトデを確認、管足を用いて歩く様子が見て取れた。5月27日に変態を終えた稚ヒトデの個体数を計測したところ、705匹となり、生存率は7割であった。
実のところ、チビイトマキヒトデの発生の詳細については既に報告がなされており(Komatsu et al, 1979)、それによるとスポーニングから約4日後に受精膜を纏ったブラキオラリア幼生が観察され、10日後には変態が完了するとされている。発生の各ステージを詳細に観察・解明されたその研究にはただただ敬意を表するばかりであって、私はその研究のおかげで、大船に乗った気持ちで幼生達の成長を見守ってやることができたわけであるが、変態を完了した稚ヒトデを上手く育てることが出来るかどうかは正直不安である。
今更ながら最後に記す。
チビイトマキヒトデはちびなイトマキヒトデではなく、チビイトマキヒトデというヒトデであって、イトマキヒトデではない。よって、若し今回生まれた子供たちをちび達と表現するなら、ちびチビイトマキヒトデが適当だと思う。
上の写真は左が卵を産み付けるチビイトマキヒトデ、真ん中が成体(dorsal view)
右が孵化したブラキオラリア幼生を示している。
また、下の動画はイトマキヒトデの生殖行動を参考にチビイトマキヒトデとの生殖孔の位置の違いを示したもの。
私の夢には、度々海の流れ星たちが訪れます。その種類はひどく現実的なものから見知らぬものまで様々です。よくあること、所謂 ’あるある‘ だと思うので「あっ、それ私も見たことある!」的な感じで共感しながら読むのもまたいいのではないでしょうか。
まずは今日見た夢のシチュエーションからです。
私はなぜか東京にいました(実際東京だったのかは謎ですが、かなり都会だったうえに日本語を話していたので東京だと思います)。そして例によって私の行き先はペットショップか何かの海水魚コーナーでした。私がヒトデを見つけたのは、エビや貝などのベントスばかりが入っている水槽の中。値札が無かったので私は店主にいくらかを尋ねたところ、詳しいことは忘れましたが何かしら馬鹿にされただけで値段を教えてくれず、ひどく頭にきたのを覚えています。その後も何か夢が続いていたような気がしなくもないですが、全部忘れました。
さて、私がみたヒトデは何だったのでしょうか? 結局店主は私にヒトデを購入させなかったので詳細な観察を行えず細かい情報は無いのですが、色と大雑把な形は覚えているのでたぶんこれが一番近いだろうといった種を挙げます。
Echinaster callosus
私が水槽のなかで左後方より少し中央よりに見つけた個体です。エアレーションの泡で視界が判然とせず腕一本だけしかとらえることは出来ませんでしたが、赤紫か紫色をしていてやけにイボが多く、白のバンド模様が入っていました。何より夢の中で私が「ああ あいつか」と納得していたのでそうなのでしょう。これはあまりにはっきりと特定できた種だったので、恐らくインターネットの画像検索で以前見ていたものが夢に出現したものだと思います。
Patiria chilensis
底砂に何個体かが寝そべっていました。正直なぜこの種が夢に出てきたのかは謎です。なにしろ私はこんな種類全く知りませんでしたから。色はくすんだ赤とグレーのまばら模様。どっちの色がベースだったかまでは観察していません。腕は短く、日本のイトマキヒトデのように腕と腕の間には水かき状の構造が存在していたためイトマキの仲間です。ああ、今更思い出したことですが、私の隣には私の他に誰か一緒に来ていた人が居た気がします。何故なら私はその誰かに対して「こいつは日本のイトマキヒトデとは違う種類だろう」と言った記憶があるからです。チリとかに居る種類らしいです。詳しいことは何も知りません。
Protoreaster nodosus
別の水槽でフリソデエビの餌になっている個体と、水面で腕を広げている二個体が居ました。
Pentaceraster sp.
水槽の左隅にひっついていました。かなり大きい個体で相当地味な色合いをしていました。ただでさえコブヒトデモドキに関してはあまり知らないのに、夢の中の不安定な個体なのですからよくわかりません。属まででご勘弁を。きっと新種だったんだと思います…。
ついでに以前他の夢の中で見たものも紹介します。
Asterina gibbosa
薄く緑色を帯びてはいるものの、無地で地味でした。直径5cmくらいだったと思います。
Henricia nipponica
一目見て見慣れたあいつだと思いました。夢にまででてくるなんて…。
Henricia sp.
これはしっかり水槽から取り出して網目状骨格を有していることを確かめたので、Spinulosida 目で確かだと思います。大きさはR=1cmくらいで色は鮮やかなオレンジ色、何か模様がありました。Henriciaは種が非常に多く分類も厄介なグループなので種小名は不明です。
Certonardoa semiregularis
和名にしてアカヒトデです。シュノーケリングの際発見しました。そのあと飼育して喜んでいた記憶があります。
Solaster dawsoni
エゾニチリンヒトデ。この時の夢は本当に意味不明で、なぜか自分たちが船に乗っていて、他の漁船がヒトデをあげていたので大急ぎでもらいにいこうとしましたが叶わず目覚めてしまいました。
Plazaster borealis
タコヒトデ。上記の夢と同じタイミングで見たものです。そういえば、あの時はヒトデ以外全て白黒の夢だったと思います。腕が物凄い数あり赤系の色をしており、日本にいたはずなので間違いないです。
Crossaster papposus
フサトゲニチリンヒトデ。上記と同じときです。何故でしょう。この時は多腕種ばかりを見ています。
Asterias amurensis
私は大学周辺に住んでいるのですが、どうも家の前に流れている水路は海水が伝わっているようです。このキヒトデは家の前の水路で目撃したものです。夢とは言え素晴らしい情景でした。ただ、現実に住んでいる私の記憶を受け継いでいたからか、採りには行きませんでした。汚いから…。
Patiria pectinifera
イトマキヒトデ。キヒトデと同じ状況でした。
淡水生ヒトデ
ヒトデは全て海産で淡水に生息するものはいません。そんな常識を覆したのがこの海星。ペットショップで淡水生物コーナーを眺めていると、レッドビーシュリンプか何かでしょうか、兎に角観賞用エビを販売している水槽の隅にヒトデがいたのです。その時私が模範的なまでのリアクションをとっていたことは記憶に新しいです。一度その水槽の前を通り過ぎた時「なんだヒトデか…。 んっ? ちょっと待てよ。」ってな具合にもう一度ヒトデの姿を確認しました。まさか夢じゃあるまいか、そうこれは夢です。色はコケに擬態していたのか深い緑色とこげ茶色を混ぜたような感じで、反口側には小隆起が存在しており、最も形態的に近しいものでコブヒトデ科であろうことが予想されました。
夢に動物が出て来ると、嘘か本当かなんかしら意味を持っているという話をどっかで聞いたことがあります。そういうよくわからない事をいう人々に、ヒトデが夢においてどんな意味をもつのか教えてほしいものです。
それにしても あの店は接客態度が悪すぎます。速やかにあの店員を首にすべきでしょう。
本講義は今迄にヒトデ飼育を行ったことのないものを対象とする。単位は2単位。欠席3回以上の者には単位を認めない。出席は毎回授業の最後に取るものとする。試験等は一切行わず、ヒトデの飼育とそれについてまとめたレポートで成績の評価を行う。講義名はいかにもそれらしいが、実際は下らない内容であることに注意する事。尚概論Ⅰについては今の所想像にお任せすることとする。
ヒトデを✯にしないために… 人手がかかるときもある
今回の講義では、ヒトデ飼育において注意するべきことについて説明する。本講義のねらいはヒトデの為により良い空間を構築し、ヒトデとの楽しい日常を悔いなく過ごすことにある。
私は何だかんだ言って、小学生の時からヒトデの飼育を行ってきた。ヒトデ人生の内の大半はイトマキヒトデであったが、最近は飼育する種類も増えてきた。
海水魚その他の生物を飼育するために最も大切なのは金(money)である。その生物を入れるための水槽となんらかの濾過・循環装置をはじめとして、クーラーやヒーターは勿論、サンゴやタコクラゲ、シャコガイ、イソギンチャクなどを飼育する際には強い照明が必要となる。また、塩分濃度(salinity concentration)を保つための比重計(gravimeter)、海水条件を再現するための人工海水(artificial sea water)の素など、必要なものは多岐に渡る。この中で照明はヒトデの飼育においてはほとんど必要にならない。ただし、オニヒトデやその他ヒトデ種の幼生の餌を育てるためには必要となるがここでは触れない。
そうはいっても、お金が無くたってヒトデを飼ってみたいと思う人もごく稀には居よう。そんな人のために存在するのが、第二の選択肢にして人類に与えられた最後の狂気、根気(patiens)である。
根気(Patiens)
さて、ではヒトデ飼育において一体どのような時に根気が必要になるのだろうか。
彼らの飼育で最も根気が必要なのは、まず彼らが余り激しい活動を行わず、かつ、親近感や情がわきにくいことである。ヒトデはある種の魚のように餌をねだってきたり、芸を覚えたりはしない。縄張りを主張したり、おびえたり、求愛のディスプレイなどもしない。表情は無いし、鳥や獣のように手触りが良いというわけでもない。他のペットや観賞用生物と比べると何もないのである。多くの人はそのような生き物を飼育して一体何を面白いと感じるだろうか。そのような生物でも飽きずに愛づることが出来るか否か、ここに一つ目の根気が使われる。
次に、実際に飼育を行った際の思わぬ困難の多さである。この詳細は次章で述べることにしようと思うが、苦労は意外と多い。
飼育における注意
私の経験はまだ十分とは決して言えるものではないが、今迄の飼育経験において気付いた飼育の注意点を幾つか挙げる。
1, 水温;水温がヒトデに与える影響は大きい。あるヒトデ種に適さないような水温はしばしば彼らを夜空の星に近づける。ヒトデに適当な水温は種によって結構異なり、熱帯域のものと冷水域のものでは特に差が大きい。例えばサンゴ礁など温かい地域に生息しているイボヒトデやカスリモミジガイは、何も水温調節機構が整えられていない水槽では日本の冬を越すのは難しい。恐らくではあるが、そのような種では水温が15℃あたりにまで下がると危険であると考えられる。少なくとも20℃くらいは確保したいところだ。一方で、キヒトデやイトマキヒトデのようなものでは、水温が一桁まで達するような環境でも生存できるようだ。特にキヒトデは水温が5℃程度でも生存が可能であって、10数℃の水温の時に最も活気に満ちていたと思う。どのヒトデであれ、夏の暑さには注意したい。水温が30℃を超えることは防ぎたいものである。お金をちょっと出して水槽用のクーラーを買うならばそれで万事解決ではあるのだが、そうしない場合は夏場果てしないくらいの根気が求められる。私の場合は、人間用の扇風機は常に水槽に向け気化熱を利用して多少の温度を下げる他、冷凍庫に淡水の入ったペットボトルを入れておき、凍ったところで水槽に投入するという作業を繰り返している。イトマキヒトデやキヒトデなどは常に30℃を超えるような環境では生存は難しいであろうし、熱帯域のものに対しても余り良いとは思えない。
2,塩分濃度;水温に関係して、ファンを用いた保冷やヒーターを用いた保温では、水の蒸発の速度が思いのほか早く、気付いたら塩分濃度が濃くなっているということがしばしばある。ヒトデの場合徐々に塩分濃度が上がる分には案外耐え得る範囲が広いようだが、だからと言ってあまりにもいい加減であるとそれは問題である。
3,餌;ヒトデの餌は特に決まりは無い。今まで捕食が確認されたのは、カキ・サザエ・シジミ・アサリ・ハマグリ・ホタテ・クボガイ・イボニシ・ムラサキイガイ・タマキビ・ヒザラガイ・マダコ・ホタルイカ・ニホンウミシダ・マナマコ・ヨツアナカシパン・オニヒメブンブク・サンショウウニ・ニホンクモヒトデ・ナガトゲクモヒトデ・イトマキヒトデ(共食い)・イボヒトデ(共食い)・オニヒトデ・キヒトデ(共食い)・ヒラモミジガイ・チビイトマキヒトデ・ヌノメイトマキヒトデ・カスリモミジガイ・イシダイ・シラス・メダカ(?)・オコゼ・カレイ・アミメハギ・イソスジエビ・シロエビ・ワタリガニ・ズワイガニ・イソメ(釣り餌)・ワカメ・キャベツなどである。この中に運動性の高いものがいくつか含まれているが、それは弱っているものであったり、スーパーで購入した死体であったりする。ワカメなど植物を捕食していたのはイトマキヒトデのみである。この中でヒトデが特に好むように思えるのは二枚貝類なのだが、貝は水が直ぐに汚れてしまうのが難点であるため、私の場合主食としてシラスを常備している。ヒトデは基本的に何でも食べるため餌には余り困らないのだが、種によっては何も食べてくれないものがある。そのようなものに対しては、貝のむき身を水槽に入れた後、その上に直接ヒトデを載せてやることで解決される場合がある。それでもうまくいかないものは正直何を食べているのかは不明。もしかしたらルソンヒトデのようにSkin digestion を行っているのかもしれないが、その場合ヒトデの空腹を満たしてやるために水質を著しく悪化させる結果になることには注意したい。
4,放卵放精;野外から捕獲してきたヒトデを新たな環境に投入する際、餌を十二分に与えてきた個体が急激な水温変化に晒された際、弱った際、これらは放卵放精を引き起こす要因となる。ヒトデの放卵放精は発生(development)をさせたいのであれば好都合ではあるが、知識・設備・経験なしにはまず出来ない。特に浮遊生活を送るものでは困難を極める。発生的な目的が無い場合、この行為はただ水質を激しく悪化させることになるだけであって、場合によっては水を全て取り替えなくてはならないため、大変な事態である。
5,他個体との関係;ヒトデ飼育で最も私が恐れているのはこれである。ヒトデは基本的に他の生物とは一緒に飼うべきではない。カニやエビの類はヒトデの管足や皮鰓を攻撃するし、魚はサイズによっては油断したところを襲われる。貝などは最早論ずるにも値しない。ウニはお互いの種類によって異なる結果になるが、イトマキヒトデやキヒトデなどの肉食性が特に強いものには追いかけられたりした後最終的に捕食される。不正形のウニの場合も同様であるが、ヒラタブンブク等の運動能力に優れたものは助かりやすい。ナマコも時に生体が襲われることがあり、我が家の場合一度だけモミジガイに丸呑みにされた。しかしながら、ナマコは他の生物に比べてヒトデと一緒に飼育しやすい生物であるといえる。私の経験では他にイソギンチャクやケヤリムシ、嘴でつつくことなく餌を丸呑みにするタイプの魚などが同じ水槽内で共存できた。
4の項目にもあるとおり、ヒトデがヒトデを食べることがよくある。何が他のヒトデを食べるトリガーになるのかはわからないが、急に共食いを始めるのだ。しかも、一度ヒトデの味をしめた個体はその後も他のヒトデを襲いやすくなる。防ぐには隔離するしかないが、ヒトデは想像できない程小さな隙間から脱走したりするため(勿論陸に上がってきたりはしない)注意が必要だ。恐らくではあるが、ヒトデのにおいが他のヒトデにそうさせると考えられる。新しく水槽にヒトデを投入する際や傷ついた組織がある個体は特に注意が必要だ。
それが最も幸福な時であったと気付いてみたりする。
そんな一日
とある平日の物語
この日を語るにはこの30分では十分すぎる。
だから悲しい、でも嬉しい。